はじめに
「外国人を雇いたいけど、何から始めればいいかわからない」
中小企業の経営者・人事担当者から最も多い相談です。外国人雇用では、ビザ(在留資格)の手続きと労務管理の手続きの両方が必要になります。この記事では、採用決定から入社後まで、時系列で必要な手続きを整理します。
Phase 1:採用決定〜入社前
① 在留資格の該当性を確認する
まず、採用したい外国人が「どの在留資格で働けるか」を確認します。
主な就労系在留資格:
– 技術・人文知識・国際業務(技人国): エンジニア、通訳、経理など専門職
– 特定技能1号: 製造業、飲食料品製造業、介護など16分野
– 特定技能2号: 熟練技能者(在留上限なし)
– 経営・管理: 会社の経営者・管理者
どの在留資格に該当するかは、業務内容・本人の学歴・経験で決まります。
② 雇用契約書を作成する
在留資格の申請には、雇用契約書が必要です。ここが重要なポイントで、契約書の業務内容と在留資格で許可される活動が一致していなければなりません。
注意点:
– 日本人と同等以上の報酬であること
– 業務内容を具体的に記載すること
– 外国語併記が望ましい(労基法上の書面交付義務)
③ 在留資格の申請
海外にいる外国人を招聘する場合:
→ 在留資格認定証明書(COE)の交付申請
既に日本にいる外国人の場合:
→ 在留資格変更許可申請(留学→就労など)
④ 就業規則の確認・整備
10人以上の従業員がいる事業所では就業規則の作成が義務です。外国人を雇用する場合は以下を確認しましょう。
- 外国人特有の規定(在留資格に関する条項)
- 多言語版の作成(母語での理解が望ましい)
- ハラスメント防止規定の確認
Phase 2:入社時の手続き
⑤ 在留カードの原本確認(最重要)
入社日に必ず在留カードの原本を確認してください。
確認すべき項目:
– 在留資格の種類
– 在留期間の満了日
– 就労制限の有無
– 在留カード番号
在留カードを確認せずに雇用した場合、雇用主も「不法就労助長罪」(入管法73条の2)に問われる可能性があります。令和6年の法改正により罰則が厳罰化され、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)となっています。
⑥ 雇用保険の資格取得届
外国人も雇用保険の加入対象です(週20時間以上勤務の場合)。
資格取得届には以下の外国人専用項目があります:
– 在留資格
– 在留期間
– 国籍・地域
– 在留カード番号
– ローマ字氏名
この届出が正しく記載されていれば、外国人雇用状況の届出を兼ねることができます。
⑦ 社会保険の資格取得届
健康保険・厚生年金への加入は、日本人と同じ条件で判断します。マイナンバーまたは基礎年金番号が必要です。
⑧ 外国人雇用状況の届出
雇用保険に加入しない外国人(週20時間未満のパートなど)は、ハローワークへの届出が別途必要です。届出を怠ると30万円以下の罰金です。
Phase 3:入社後の管理
⑨ 在留期間の更新管理
在留資格には有効期限があります。期限の3ヶ月前から更新申請が可能なので、余裕を持って準備しましょう。
外国人が複数いる場合は、一覧表(管理台帳)で期限を管理することをおすすめします。更新漏れは最悪の場合、不法残留となります。
⑩ 定期届出(特定技能の場合)
特定技能外国人を受け入れている企業は、年に1回の定期届出が必要です。2026年の届出期限は5月31日です。
新たに社保・税金の納付状況書類の提出が必要になりました。届出を怠ると受入れ停止のリスクがあります。
⑪ 退職時の届出
外国人が退職した場合:
– 雇用保険の資格喪失届(社労士業務)
– 外国人雇用状況の届出(退職の届出)
– 本人は所属機関に関する届出を14日以内に入管へ提出する必要あり
⑫ 助成金の活用
外国人雇用で活用できる主な助成金:
- キャリアアップ助成金(正社員化コース): 有期→正社員で40万〜80万円/人(中小企業。重点支援対象者は80万円)
- 人材開発支援助成金: 職業訓練・日本語研修の費用助成
- 人材確保等支援助成金: 雇用管理制度の導入で最大72万円
重要: 助成金は事前に計画届の提出が必要です。研修開始後・転換後に申請しても認められません。
外国人雇用 手続きタイムライン
全体を1枚でまとめると以下の流れです。
【採用決定】
│
├─ 在留資格の確認・選定
├─ 雇用契約書の作成
├─ 就業規則の確認
│
▼ 申請(1〜3ヶ月)
【許可・入社日決定】
│
├─ 在留カード原本確認 ← 最重要!
├─ 雇用保険資格取得届(翌月10日まで)
├─ 社会保険資格取得届(5日以内)
├─ 外国人雇用状況届出(翌月末まで)
│
▼ 入社後
【定期管理】
├─ 在留期間の管理(満了3ヶ月前に更新申請)
├─ 定期届出(特定技能:毎年4/1〜5/31)
├─ 助成金活用の検討(入社6ヶ月〜)
└─ 退職時の届出
チェックリスト【印刷して使える】
入社前
- 業務内容に合った在留資格を特定した
- 雇用契約書を作成した(業務内容を具体的に記載)
- 報酬は日本人と同等以上か確認した
- 在留資格の申請を行った(または行政書士に依頼した)
- 就業規則を確認・整備した
- キャリアアップ計画書を労働局に提出した(助成金活用の場合)
入社時
- 在留カードの原本を確認した(コピー保管)
- 在留期間満了日を管理台帳に記録した
- 雇用保険資格取得届を提出した
- 社会保険資格取得届を提出した
- 外国人雇用状況の届出を行った(雇保で兼ねない場合)
入社後(継続管理)
- 在留期間の更新スケジュールを設定した
- 特定技能の定期届出の期限を把握している
- 正社員転換のタイミングで助成金を申請した
よくある質問(FAQ)
- 在留カードを確認しないまま雇用してしまいました。どうすればいいですか?
- 今 すぐ原本を確認してください。偽造でないか、在留期限が切れていないか、就労制限がないかをチェックします。万が一不法就労だった場合は即座に専門家に相談を。確認を怠った場合、企業側にも不法就労助長罪のリスクがあります。
- 外国人従業員にも36協定は適用されますか?
- は い。日本で働くすべての労働者に労基法が適用されます。外国人だから長時間労働が許されるということは一切ありません。36協定の届出がなければ、残業させること自体が違法です。
- 特定技能の登録支援機関と行政書士は何が違いますか?
- 登 録支援機関は「入社後の生活支援」(住居手配、相談対応、面談など)を行う機関です。行政書士は「在留資格の申請書類作成・提出」を行います。両方必要になるケースが多いですが、行政書士が登録支援機関を兼ねている場合もあります。
まとめ:ワンストップ対応のメリット
外国人雇用では、行政書士の業務(在留資格申請)と社労士の業務(社保手続き・助成金)が交互に発生します。
別々の専門家に依頼すると:
– 雇用契約書の内容が食い違うリスク
– 社保書類と入管書類の整合性チェックが煩雑
– 窓口が2つになり、企業の負担が増える
ASC行政書士事務所は社労士法人代表が運営しているため、ビザ申請→社保→助成金→定着支援まで、1つの窓口で完結します。