在留資格の手数料が大幅引き上げへ【2026年入管法改正】企業への影響と対策

手数料引き上げの概要

2026年4月28日、在留資格の更新・変更に関する手数料の上限を引き上げる入管法改正案が衆議院を通過しました。

これにより、外国人の在留に関する手数料が大幅に引き上げられます。

具体的な金額

手数料上限の変更

区分 現行上限 改正後上限
通常の在留資格(変更・更新等) 1万円 10万円
永住許可 1万円 30万円

実際の適用額(目安・政令で決定)

在留期間 現行 改正後目安 倍率
1年 6,000円 約3万円 約5倍
3年 6,000円 約6万円 約10倍
5年 6,000円 約7万円 約11.7倍
永住 10,000円 約20万円 約20倍

※現行手数料は2025年4月1日改定後の金額です(オンライン申請は500円引き)。実際の引き上げ後の金額は改正法成立後に政令で決定され、2027年3月31日までに施行される見込みです。

なぜ引き上げるのか

手数料引き上げの主な理由は以下の3つです。

  1. 入管DXの推進費用 — オンライン申請システムの整備・改修
  2. 在留外国人の生活支援施策の財源 — 多言語対応、相談窓口の充実
  3. 受益者負担の適正化 — 在留期間が長いほど受ける便益が大きいため段階制に

なお、経済的に困窮している外国人には減額・免除の仕組みも設けられる予定です。

企業への影響

コスト面

外国人を雇用する企業にとって、手数料引き上げは直接的なコスト増になります。

例:特定技能1号の外国人5人を雇用する企業

項目 現行 改正後 差額
年間更新手数料(5人分) 3万円 15万円 +12万円
5年間合計 15万円 75万円 +60万円

人件費計画に「ビザ更新コスト」を明示的に組み込む必要が出てきます。

申請の質が重要に

手数料が上がることで、1回の申請の重みが増します

  • 不許可 → 手数料が無駄に(再申請時にまた手数料が発生)
  • 書類の不備 → 追加資料の提出で審査が長期化

「とりあえず出してみる」が通用しなくなります。申請書類の精度がこれまで以上に重要です。

定着戦略の重要性

更新コストが増えるため、企業は「外国人に長く働いてもらう」方向へのインセンティブが強まります。

  • 離職→再雇用のコストが跳ね上がる
  • 就業環境の整備、キャリアパスの設計がより重要に
  • 育成就労制度での「転籍」を見据えた処遇改善

企業ができるコスト対策

1. 助成金の活用

コスト増を助成金で相殺する戦略が有効です。

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース): 40万〜80万円/人(中小企業。重点支援対象者は80万円)
  • 人材開発支援助成金: 研修費用の助成
  • 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース): 最大72万円

例えば、手数料が年間12万円増えても、キャリアアップ助成金で40万〜80万円/人を獲得すれば大幅なプラスです。

2. 在留期間の戦略的選択

5年更新(約7万円)と3年更新(約6万円)の差額は約1万円。5年許可が取れれば、次の更新まで5年間は手数料不要です。

5年許可を取得しやすくするポイント:
– 企業がカテゴリー1・2に該当する(上場企業、源泉徴収税額1,000万円以上)
– 申請人の在留実績が安定している
– 届出義務を確実に履行している

3. 専門家への依頼

手数料が高額化する分、不許可のリスクを避けるために専門家に依頼する合理性が上がります

従来は「手数料6,000円だし、自分でやろう」という企業も多かったですが、手数料が3万〜7万円になれば、「確実に許可を取れる専門家に頼む方が結果的に安い」という判断になります。

外国人への影響と注意点

手数料の負担者

手数料を誰が負担するかは企業と外国人の取り決めによります。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 全額を外国人本人に負担させる場合: 賃金から控除するには労使協定が必要(労基法24条)
  • 手数料が高いから更新しない → 不法残留 のリスクに注意
  • 困窮者への減額・免除制度の情報を外国人にも伝える

永住許可への影響

永住許可の手数料が約20万円になることで、永住申請のハードルが上がります。一方で、永住を取得すれば以後の更新手数料は不要になるため、「早めに永住を取る」という戦略も考えられます。

5年間のコストシミュレーション

外国人10人を雇用する企業の5年間コスト比較です。

シナリオA:対策なし(現行のまま放置)

項目 5年間コスト
更新手数料(10人×3万円×5回) 150万円
不許可による再申請(2件×3万円) 6万円
離職→再雇用コスト(2人×50万円) 100万円
合計 256万円

シナリオB:戦略的対策あり

項目 5年間コスト
更新手数料(10人×7万円×1回※5年許可) 70万円
行政書士費用(確実な許可のため) 50万円
コスト合計 120万円
キャリアアップ助成金(5人×40万〜80万円) ▲200万〜400万円
差引 ▲80万〜280万円(プラス)

※5年許可を取得すれば5年間更新不要。助成金活用でコスト以上のリターンが期待できます。

よくある質問(FAQ)

手数料の引き上げはいつから適用されますか?
改 正法が成立した後、政令で具体的な金額と適用開始日が決定されます。2026年度中の適用が見込まれていますが、正確な日付は政令の公布を待つ必要があります。
既に申請中のケースはどうなりますか?
申 請時点の手数料が適用されます。引き上げ前に申請を完了すれば、旧手数料で処理されます。更新期限が近い外国人がいる場合は、引き上げ前に申請することも検討に値します。
手数料は企業が負担すべきですか?外国人本人が負担すべきですか?
法 律上の決まりはありませんが、以下に注意してください。
– 本人負担にする場合、賃金から控除するには労使協定(労基法24条)が必要
– 企業負担にすることで定着率が上がるメリットがある
– 特定技能の場合、手数料を本人に負担させることが「不当に不利益な契約」に該当しないか注意
永住許可の手数料が20万円になるなら、永住申請する意味はありますか?
あ ります。永住を取得すれば以後の更新手数料は一切不要になります。仮に引き上げ後の5年更新を3回繰り返すと約7万円×3回=約21万円。永住を1回(約20万円)で取得する方が長期的には安くなります。さらに、就労制限がなくなる、転職が自由になるなどのメリットも大きいです。

今後のスケジュール(見込み)

時期 内容
2026年4月28日 衆議院通過(済み)
2026年5月〜6月 参議院審議・成立見込み
2026年夏〜秋 政令公布(具体的金額の決定)
2026年度内 新手数料の適用開始

まとめ

在留資格の手数料引き上げは、外国人雇用のコスト構造を変える大きな変更です。

企業が取るべき対策は3つ:
1. 助成金を活用してコストを相殺する
2. 書類の精度を上げて不許可リスクを減らす
3. 定着支援を強化して更新回数を減らす

ASC行政書士事務所は社労士法人代表が運営しているため、在留資格の申請と助成金の活用提案をワンストップで行えます。手数料引き上げへの対策も含めてご相談ください。

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