外国人を専門職として雇用する際、最も多く利用される在留資格が「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国(ぎじんこく))です。
この記事では、技人国ビザの要件・必要書類・申請の流れを、2026年4月の制度改正を踏まえた最新情報で解説します。
技術・人文知識・国際業務(技人国)とは
「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識・技術を活かす仕事に従事する外国人のための在留資格です。
根拠法令: 出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第一の二
日本で最も取得者が多い就労系在留資格のひとつで、エンジニア・通訳・マーケティング・経理など幅広い職種が該当します。
3つの区分と具体的な職種
| 区分 | 分野 | 具体的な職種例 |
|---|---|---|
| 技術 | 自然科学(理系) | システムエンジニア、プログラマー、機械設計、電気技師、建築設計、研究開発 |
| 人文知識 | 人文社会科学(文系) | 経理、財務、法務、マーケティング、コンサルティング、企画、貿易実務 |
| 国際業務 | 外国文化に基盤 | 通訳、翻訳、語学指導、海外取引、デザイン(外国文化的感受性が必要なもの)、広報 |
技人国に該当しない業務(注意)
以下は「単純労働」とみなされ、技人国では認められません。
- 飲食店での調理・接客(専門的判断を伴わないもの)
- 工場の製造ライン作業(部品の組立・検査・梱包)
- 小売店でのレジ・品出し
申請の要件
学歴要件
| 区分 | 学歴 | 実務経験で代替 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識 | 大学卒業(学士以上)または日本の専門学校卒業(専門士) | 10年以上の実務経験 |
| 国際業務 | 大学卒業 | 3年以上の実務経験(翻訳・通訳・語学指導は大卒のみでOK) |
注意: 海外の専門学校は学歴要件を満たしません。日本の専修学校専門課程で「専門士」を取得した場合のみ有効です。
業務内容との関連性(最重要ポイント)
学歴(専攻分野)と従事する業務に関連性があることが求められます。
例えば、経営学部卒の外国人を「通訳」として申請する場合、学歴と業務の関連性が薄いため不許可リスクが高くなります。
報酬要件
日本人と同等額以上の報酬を受けることが必要です。「外国人だから安く雇える」は入管法上認められません。
企業カテゴリーと提出書類の違い
受入れ企業は4つのカテゴリーに分類され、カテゴリーによって提出書類の量が大きく異なります。
| カテゴリー | 該当企業 | 書類量 |
|---|---|---|
| 1 | 上場企業、国・地方公共団体、独立行政法人 | 最少 |
| 2 | 前年の源泉徴収税額が1,500万円以上 | 少ない |
| 3 | 源泉徴収税額1,500万円未満の一般企業 | 標準 |
| 4 | 新設企業等 | 最多(事業計画書等が追加) |
【2026年4月15日施行】日本語能力要件の追加
2026年4月15日から、技人国ビザの審査基準に日本語能力要件が追加されました。これは近年最大の制度変更です。
対象
- カテゴリー3・4の企業に所属する外国人
- 対人業務(言語能力を使用する業務)に従事する場合
求められるレベル
CEFR B2相当の言語能力を証明する書類の提出が必要です。
| 証明方法 | 基準 |
|---|---|
| 日本語能力試験(JLPT) | N2以上 |
| BJTビジネス日本語能力テスト | 400点以上 |
| 日本の大学・専門学校卒業 | 自動的にB2相当とみなされる |
| 日本での義務教育修了+高校卒業 | 自動的にB2相当とみなされる |
免除されるケース
- カテゴリー1・2の企業に所属する場合
- 継続雇用で業務内容に変更がない在留期間更新
- 日本語を使用しない業務(例:英語のみで完結するエンジニア業務)
企業への実務的影響
この改正で職務記述書(ジョブディスクリプション)の重要性が格段に上がりました。「日本語を使う業務かどうか」が許可・不許可の分岐点になるため、職務内容を明確に記述する必要があります。
また、所属機関代表者の宣誓書も新たに必要書類に加わっています。
必要書類一覧
全カテゴリー共通
- 在留資格認定証明書交付申請書(または変更・更新許可申請書)
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- 返信用封筒(認定申請の場合)
カテゴリー3の企業の場合(中小企業の標準)
- 会社の登記事項証明書
- 直近年度の決算報告書(損益計算書・貸借対照表)
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 雇用契約書(業務内容・報酬額を明記)
- 申請人の卒業証明書・成績証明書
- 申請人の履歴書
- 申請理由書(なぜこの人材が必要かを説明)
- 事業内容を明らかにする資料(会社案内等)
- 【2026年4月〜】日本語能力証明書類(対人業務の場合)
- 【2026年4月〜】所属機関代表者の宣誓書
申請の流れ(認定証明書交付申請の場合)
STEP 1 在留資格の該当性を確認
└ 学歴×業務内容の関連性チェック
↓
STEP 2 必要書類の収集・作成
└ 申請理由書・雇用契約書の作成
↓
STEP 3 入管へ申請(在留資格認定証明書交付申請)
└ 管轄の地方出入国在留管理局へ提出
↓
STEP 4 審査(1〜3ヶ月)
└ 2026年以降、審査期間が長期化傾向
↓
STEP 5 認定証明書(COE)交付
└ 申請人へ送付
↓
STEP 6 本国の日本大使館・領事館でビザ発給
↓
STEP 7 来日・入国
審査期間の目安
- 認定申請: 1〜3ヶ月
- 変更申請: 2週間〜2ヶ月(2025年7月に最大64.2日を記録)
- 更新申請: 2週間〜1ヶ月
手数料
| 申請方法 | 金額(2025年4月改定後) |
|---|---|
| 窓口申請 | 6,000円 |
| オンライン申請 | 5,500円 |
よくある不許可事例と対策
1. 学歴と業務の関連性が認められない
事例: 国際コミュニケーション学科卒 → 飲食店の店舗管理
対策: 雇用契約書と申請理由書で、学歴と業務の関連性を具体的に説明する。
2. 業務内容が実質的に単純労働
事例: 職務記述書には「マーケティング」と記載されているが、実態は接客のみ
対策: 日常業務の具体的内容を職務記述書に明記し、専門性を証明する。
3. 報酬が日本人と比べて低い
事例: 同職種の日本人社員は月給25万円、外国人は18万円
対策: 賃金規程と照らし合わせ、同等以上の報酬設定にする。
4. 企業の経営状態が不安定
事例: 設立直後の企業で決算書がない
対策: 事業計画書・今後1年間の収支見込み・事業所写真を添付し、安定性を証明する。
5. 留学中の資格外活動違反
事例: 留学中にアルバイト週28時間超過の記録がある
対策: 事前に活動記録を確認し、違反があれば反省文と改善計画を添付する。
6. 派遣形態での申請(2026年3月〜厳格化)
事例: 派遣社員として申請、派遣先での業務が単純労働に近い
対策: 派遣先での具体的業務内容を明記した書類を準備する。直接雇用に切り替えることも検討。
申請前チェックリスト【人事担当者向け】
1つでも「いいえ」がある場合は、申請前に専門家への相談をお勧めします。
- 申請人の学歴(専攻)と業務内容に関連性があるか
- 雇用契約書に具体的な業務内容・報酬額が明記されているか
- 報酬額が日本人の同職種と同等以上か
- 職務記述書(JD)を作成しているか
- 日本語能力要件に該当する場合、証明書類を用意したか(2026年4月〜)
- 所属機関代表者の宣誓書を準備したか(2026年4月〜)
- 会社の決算が赤字の場合、事業計画書等で安定性を説明できるか
- 申請理由書で「なぜこの外国人でなければならないか」を説明しているか
技人国ビザ取得後に必要な手続き(社労士の視点から)
技人国ビザが取得できたら終わりではありません。入社後には以下の手続きが必要です。
| 手続き | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 雇用保険の資格取得届 | ハローワーク | 翌月10日まで |
| 社会保険の資格取得届 | 年金事務所 | 5日以内 |
| 外国人雇用状況の届出 | ハローワーク | 翌月末日まで |
| 所属機関変更届(転職の場合) | 入管 | 14日以内 |
よくある質問(FAQ)
- 文系学部卒でもIT企業のエンジニアとして申請できますか?
- 大 学で情報処理やプログラミングに関連する科目を履修していれば可能です。成績証明書で関連科目を確認し、申請理由書で説明する必要があります。完全に無関係の学部の場合は10年以上の実務経験が必要です。
- カテゴリー4(新設企業)でも技人国は取れますか?
- 取 れます。ただし、提出書類が最も多く、事業計画書・収支見込み・事業所写真なども求められます。
- 2026年4月の日本語要件、在留期間更新にも影響しますか?
- 継 続雇用で業務内容に変更がない「在留期間更新」は免除されます。ただし、転職を伴う「在留資格変更」や業務内容が大幅に変わる場合は対象になります。
- 技人国と特定技能、どちらで雇うべきですか?
- 業 務内容によります。専門的・技術的業務なら技人国、現場業務なら特定技能が適切です。詳しくは特定技能の解説記事をご覧ください。
- 手数料の値上げはいつからですか?
- 2 025年4月に窓口6,000円に改定済みです。さらに2026年度中に1〜7万円への大幅値上げが予定されています(法改正の成立時期により変動)。申請を検討中の方は早めの準備をお勧めします。
まとめ
技人国ビザは外国人雇用で最も一般的な在留資格ですが、2026年の制度改正により、特に中小企業(カテゴリー3・4)では申請の難易度が上がっています。
ポイントは3つ:
- 学歴と業務の関連性を職務記述書で明確に証明する
- 日本語能力要件への対応(2026年4月〜)
- 手数料値上げ前の早めの申請準備
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